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No.7825投稿日時:2010/09/20(月) 00:44  <親記事>
投稿者:横浜セーラー

1977年のベートーヴェン・チクルス

 カラヤン&BPOによる1977年東京公演でのベートーヴェン交響曲全集がTOKYO FMから発売されました。中でも11月18日の第9は、No.2067のところでも書きましたように、個人的に以前から商品化を心待ちにしておりましたので、うれしい限りです。強いて言えば、同時発売の第5などと比べて、音の分離が悪く音質面で難がなくもないのですが、ここらへんの事情(録音機材のトラブル)はジャケットに解説されていて、このことは私は初めて知りました。でも、演奏内容はそれを補って余りあるものですから、最初の数秒〜数十秒だけお聞きになってがっかりなさらず、是非、一度でも全曲を通してお聞きになることをお薦めしたい1枚です。
 カラヤンのライヴでの第9といえば、同じ普門館で演奏された1979年の演奏が既に発売されていて、基本的な解釈は同一で、録音状態も良好なのですが(実際、第1楽章などは、演奏内容も含めて大変聞き栄えがします。)、全曲を通して聴いた後の感銘の深さはかなり異なります。1つには、(私の寝ぼけた印象かもしれませんが)79年盤では各パートのピッチが今ひとつ不安定で、落ちつくべきところに落ちついていないといった印象を受けます。(天下のBPOをして何故?と不思議なくらいなのですが、当時日本に来襲していた台風による気圧変化が影響したのではないかと、真剣に考えてしまいたくなります。)また、フィナーレが典型的なのですが、感情がこもったあまり(?)、音楽の流れが不安定だったり、音のバランスが悪くなっている部分が散見されます。要するに、大変な熱演であることは間違いないはずなのに、どこか落ちつきのない、まとまりのない演奏のような印象を受けてしまうのです。
 一方、今回発売された77年盤では、カラヤン的な落ちつきを伴ったスタイリッシュな雰囲気を保ちながらも、圧倒的な推進力と細やかな表情付けを与えることに成功しています。(早めのテンポにもかかわらず、第3楽章とか歓喜のメロディが心に染みますね。)
 それにしても、この演奏のフィナーレの「かっこ良さ」は、まさに空前絶後ですね。ティンパニや大太鼓、シンバルなどの打楽器群が見事な効果をあげていると思いますが、ともするとしり切れとんぼのような印象を与えかねないこの曲の終結を、たたみ込むような推進力と高揚感で締めくくっています。
 ということで、個人的には数あるカラヤンの演奏の中でも、また、第9の演奏としてもとびきりお気に入りの演奏がリリースされて、近頃ない喜びに浸っております。関係者の皆様、まことにありがとうございます。
 



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