No.441 | 投稿日時: | 2002/02/01(金) 05:44 <↑親記事:No.438> |
投稿者: | らぴーと <E-Mail> |
初めておじゃまします。
この録音、特にカラヤン5回目の「悲愴」の大ファンです。
4番と5番は他に愛聴盤があるのですが、悲愴に関しては
いろいろと聴いても、「やはりこの演奏に勝てるものはない!」
と思いつづけてきました。
特に、カラヤンのその後の録音や、ムラヴィンスキーの録音の支持者には、ライバル意識むき出しでした。
カラヤンのその後の2回の録音は、世間の高い評価は高いものの、金管の録音が薄っぺらく、しかもよくはずす'76年盤、
録音は鮮明だがオケのアンサンブルが不精緻な'84年盤、
もっといい演奏がここにあるのに…
どうしても納得が行かなかったですね。
今回のCD発売の経緯や、反響の大きさを見ていると、
「何度聴いても、この'71年盤こそ最高だ!」
そう思いつづけていたのは自分だけではなかったことが証明された?
ようで、非常に嬉しい限りです。
ライブでもここまで盛り上がらないのでは、と思えるほどの圧倒的な迫力と勢いは言うまでもありませんが、特に、その色彩感が他の演奏を圧倒していることにこそ、この録音の価値がある、と思います。
例えば、第3楽章のマーチに入る前のクレッシェンドのところ、弦楽器の半音ずつ上がる刻みとホルンが絶妙の和声感を再現し、トロンボーンが見事なクレッシェンドをかけてくる、
このへんの演出は、故志鳥氏の表現を借りれば、まさに「舌を巻く」としか言いようのないもので、他のどのCDでも聴けないものです。
私がこの録音に出会ったのは11年前、まだ学生の頃で、当時は、まだ品番がTOCE-○○○○になる前の(EMIのエンジェルマークが健在だった頃の)古い3枚組のCDでしたね。
数年後、「リマスターテープ使用」と書かれたTOCE-1506(だったかな?)が発売されましたが、国内にある2チャンネルマスター(マスターの番号が2YRAで始まるもの)から起こしたと思われるCDの音質に満足できず、レコードプレーヤーを実家から取り寄せ、4チャンネルSQサウンドなる触れ込みの中古LP盤(マスターの番号が2QRAで始まるもの)を探し回ったものでした。
打楽器奏者の私にとっては、この4チャンネル盤でのシンバルの音が病み付きに?なってしまって、CDの貧弱な響きでは我慢できなくなってしまったものです。
シンバルの音の響きの広がり、音の華麗さという点では、4チャンネル盤が圧倒的に優れていましたからね。
しかし、最もすごい響きで入っている4発目にちょうど傷がついていてまともに聴こえなかったり、状態のいいレコードになかなか巡り会えず、ほんとに苦労しましたね。
さらに数年後、当初はCLASSIC21オリジナルCDとして会員限定で発売されたHS2088リマスタリングCD、こちらのひそかな希望は打ち砕かれ、またもやしょぼいシンバル。
あとは本家EMIにartで出してもらうしかないなあ…と思いながら、いつの間にかその夢を半分あきらめてしまっていたんですね。
そしていよいよ今回のartリマスタリングCDの発売、
(「擬似」は付けないで!!こんなにいい音なんだから!!)
4枚目にして、ようやく真の音に近いはずの素晴らしい音のCDに巡り会うことができました。
長い長い道のりでした。ほんとうに。
シンバルの音はもう涙ものの鮮烈さ。
第1楽章の第2主題や再現部は、リヒャルトを聴いてるかのようなすばらしい響きの美しさ。
残響の多い教会で、広大な音場感の4チャンネル録音、それとカラヤン/ベルリンフィルの勢いが見事にマッチして、すさまじい音の渦に巻き込まれてしまいそうです。
リマスタリングを名乗るCDは山ほど発売されていますが、今回のこのCDは、後続の録音にも優る素晴らしい鮮度を誇っています。どのような手段がとられているのかはわかりませんが、同時期のDGの録音よりもはるかに鮮明な印象です。EMIからDECCAに変身したかのような素晴らしい音、これほどの成功例はそうそうないと思います。
昔読んだレコ芸の情報では、どうやら
オリジナルマスターテープは4チャンネル録音だった、
国内盤の大半は2チャンネルマスターから作られていた、
ようです。
なお、両者の技術的な相違や、マスターが複数の方式で存在する理由については、存じておりません。ただ、各雑誌の情報から推測するに、国内グランドマスターシリーズのHS2088盤も、この2チャンネルマスターから作られているようです。
つまり、念のため、art盤とHS2088盤との音の差は、リマスタリングの性能の優劣ではなく、音源の違いによるものが大きいはずです。
同じように4チャンネル録音されたワーグナー管弦楽曲集などでも両者の違いは明らかです。
あとは、ファンへのせめてもの償い?として、ヨーロッパではライセンス生産となったこの録音を、日本国内では東芝EMIのartシリーズで発売してもらいたいですね。