《演奏会記録3》1973年12月7日と推定されるベルリン市庁舎での写真 (最終改訂:2008.7.13.)
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《演奏会記録3》 1973年12月7日と推定されるベルリン市庁舎での写真

カラヤンとベルリン・フィルの弦楽器奏者が写っているモノクロ写真があります。(写真1
コンサート・ホールではなく会議場(会議室)の中のようです。
カメラを構えた人やヴァイオリンを持ってる若い女性が写っています。

写真の裏にはスペイン語のキャプションがあり、右下の「7-12-73」は1973年12月7日という日付を示しているようです。(写真3

スペイン語のため詳細は充分には分からないのですが、
・カラヤンがベルリンの名誉市民賞を与えられた。
・シェーネベルク市議会の会議場で行われた記念行事においてベルリン・フィルを指揮した。
・ブラント首相がカラヤンに祝電を送った。
ということが書かれているようです。

註:カラヤンは1973年11月23日にベルリン市の名誉市民になっています。

1973年12月7日にベルリン名誉市民の授与式典が行われ、それに対する返礼演奏会の時の写真という可能性があるとご指摘を受けました。

知りたいことは、
・日付:写真の日付は1973年12月7日であるか。(従来の演奏会記録には1973年12月7日はない。)
・ベルリン名誉市民授与式典の返礼演奏会の写真なのか。
・会場はベルリン市庁舎か。
・演奏した楽曲は何か。(ビオラ奏者のパート譜ー写真2−が写っているが、パート譜の画像から曲目が特定できるか。)
ということです。


写真1:Karajan/BPh 7-12-73 1973年12月7日と推定されるベルリン市庁舎での写真
写真2:写真1の一部(ビオラ奏者のパート譜)  写真1の一部(ビオラ奏者のパート譜)
写真3:写真1裏面のキャプション

(写真画像は東京のS氏にご提供いただきました。2008.7.3.)



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追記:2008.7.12.
「演奏した楽曲は何か。」(ビオラ奏者のパート譜の画像から曲目が特定できるか。)
について紺戸淳氏にご教示いただきました。あわせて参考の楽譜画像(Eulenburg版、ポケットスコア)をご提供いただきました。(2008.7.9.)
紺戸氏のご教示に基づき記述します。

ーここからー

楽曲はモーツァルトのディヴェルティメント ニ長調 KV334

写真2(写真1の一部)に写っているビオラ奏者のパート譜は
ディヴェルティメント ニ長調 KV334の第3楽章と第4楽章(部分)
です。

写真2に写っているビオラのパート譜の左側最上部はディヴェルティメント,ニ長調KV334の第3楽章冒頭です。
左側の下から3段目(上から10段目)の少し楽譜が引っ込んでいる部分がディヴェルティメント,ニ長調KV334の第4楽章冒頭部分です。
パート譜右側最上段はKV334の第4楽章,第17小節目からです。

Eulenburg版、ポケットスコアの第3楽章(Menuetto)冒頭
Eulenburg版、ポケットスコアの第4楽章(Adagio)冒頭
をご覧ください。
Eulenburg版、ポケットスコアの第3楽章、第4楽章のビオラパートと、写真2に写っているパート譜を比べてみると同じであることが分かると思います。

写真2に写っているパート譜は「確かなことは分かりませんが、Breitkopf & Haertelの旧全集のようです。」とのことです。

ーここまでー


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追記2:2008.7.13.
「写真1は、K.334 のどの一瞬であるか」について紺戸氏が興味深い推論をなさいました。

ーここから原文のまま記載ー

●写真1の演奏の瞬間

(1)ヴィオラは、カッポーネが下から2番目のD線 (何も指で押さえない
 と D音 (レの音) が鳴る弦) を中指で押さえている。
 よってヴィオラの弾いている音は、F音 (ファの音) かF#音
 (ファ#の音) であるが、中指は薬指に近い方の位置にあるので、
 F#音と判断される。

(2)第1ヴァイオリンは、 ヴィオラほどはっきりは分からないが、3人の
 指を総合的に見ると、A線 (何も指で押さえないと A音 (ラの音) が
 鳴る弦) のオクターブ高い A音 を、中指あるいは薬指で押さえて
 いるように見える。

(3)ヴィオラは、弓の先端部分が弦に触れている。これは、下げ弓
 (下に向かって弓を動かす運動) の終わりの方か、上げ弓 (反対
 に上に向かって弓を動かす運動) の始めの方である。これらから、
 ヴィオラのF#音は、フレーズの開始か終了と推定される。
 加えて、弓のこの部分ではスタッカートは弾けないので、ヴィオラの
 音にはスタッカートは付いていない。

(4)第1ヴァイオリン、ヴィオラとも写真によって切り取られた一瞬は
 弓が止まって見えるので、弓の速度はゆっくりか、ややゆっくり
 くらいであり、どちらのパートも細かい音のパッセージは弾いて
 いない。

 以上の条件を勘案すると、これらを満たす箇所は、第3楽章、第4楽章
 通じて、ただ一箇所であり、それは


 第3楽章 第13小節の3拍目
 (Eulenburg スコア 第3楽章 (左ページ) 3段目の左から2小節目)


 である。

と、このような推定が成り立ちます。
ただし、これは別の見方をされる方があるかも知れません。
写真の切り取られた 「一瞬」 の見え方による、あくまでも推論であることを
ご承知おきください。

ーここまでー

先に紺戸氏からご提供を受けたEulenburg版、ポケットスコアの第3楽章(Menuetto)の該当箇所に赤い矢印をつけた画像をご覧ください。 Eulenburg版、ポケットスコアの第3楽章(Menuetto)、写真1の演奏の瞬間



写真1:Karajan/BPh 7-12-73 1973年12月7日と推定されるベルリン市庁舎での写真



写真2:写真1の一部(ビオラ奏者のパート譜) 



写真3: 写真1裏面のキャプション



Eulenburg版、ポケットスコアの第3楽章(Menuetto) 冒頭

W.A.Mozart : Divertimento D-dur KV334 (Nr.17), III Satz (Menuetto)


III Satz Menuetto

それぞれの上から4段目がビオラのパートです。



Eulenburg版、ポケットスコアの第4楽章(Adagio) 冒頭

W.A.Mozart : Divertimento D-dur KV334 (Nr.17), IV Satz (Adagio)

IV Satz Adagio

それぞれの上から3段目がビオラのパートです。



Eulenburg版、ポケットスコアの第3楽章(Menuetto)、写真1の演奏の瞬間

写真1の演奏の瞬間

「第3楽章 第13小節の3拍目」
(Eulenburg スコア 第3楽章 (左ページ) 3段目の左から2小節目)
赤い矢印をつけたところです。

写真1を上の楽譜と同じ幅(800pixel)で再度掲載しました。