Herbert von Karajan : Score
ここでは「カラヤンが独自にスコアを変更した演奏とその箇所」を取り上げます。
カラヤンがスタジオ録音、演奏会で取り上げたR.シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」作品20に、
・46小節にシンバルが追加されている演奏
・46小節にシンバルが追加されていない演奏
があることをM氏に教えていただきました。
このことを《 NEW カラヤンBBS (2) 》に書かせていただきました。
[106] 「ドン・ファン」46小節のシンバル追加
このようなスコアの変更が他の楽曲にもあることを当「資料室」顧問、資料室長のAntonさんに教えていただき、
「もうひとつの演奏史」としてまとめてみるのも、興味深いのではないでしょうか、
との提案がありました。
そして作ったのがこのページです。
Mさん、Antonさん、マハロさん、櫻井@横浜在住さん、kikusukeさん、kofiさん、Kさん、りったーさん、おぐちゃんさんに教えていただいたことを掲載させていただきます。
カラヤンによるスコアの変更: 皆様のご投稿(パート1)
カラヤンによるスコアの変更: 皆様のご投稿(パート2)
作品別
R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」作品20
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」
〈Antonさんから〉 1.ベートーヴェン 第九交響曲(76,77年、83年) 第2楽章 276、280小節 ヴァイオリンのシラソミ(第一主題の5小節目にあたる部分)をスコアより1オクターブ上げている。 2.チャイコフスキー交響曲第1番第1楽章 1分56秒(2CDシリーズのOIBP盤)あたり、 ヴァイオリンの第一主題の最後の音を1オクターブ高く演奏させている(楽譜のミスの可能性あり)。 3分44秒あたり ファファレレ ファファレレ ソソミミ ソソファファを ファレファレ ファレファレ ソミソミ ソファソファと演奏させている。 3.チャイコフスキー交響曲第4番第4楽章(71年、76年) 最後の伸ばしに楽譜にないシンバルと大太鼓を追加 (楽譜ではティンパニとトライアングルのみ。スコアどおりで演奏するとやや違和感あり。) 4.スメタナ モルダウ 83年ライブ映像、CD両方(同じテイクの可能性あり)で ヴィシュフラドの主題をトランペットに吹かせている。 5.ウェーバー魔弾の射手序曲 85年ライブ映像、最後の伸ばしでティンパニのロールを追加 6.ブルックナー4番交響曲 第一楽章 ヴァイオリンのオクターブ上げ、展開部頂点でのティンパニ。 第4楽章のシンバル、展開部でのティンパニ。 7.R.シュトラウス アルプス交響曲(オルガンパートに変更を加えているとカラヤン自身の証言) 8.ムソルグスキー/ラヴェル 展覧会の絵(最後の来日公演でスコアにはないオルガンを追加) 9.レスピーギ 「ローマの松」(1984来日公演でスコアにはないワーグナーチューバを追加) 10.メタモルフォーゼン」の弦の人数を増やしている 11.ニールセン 不滅 コーダのティンパニの掛け合いがグリッサンドで終結した時の長めのゲネラルパウゼ、 第二ティンパニ奏者の最後の短音を第一奏者とおなじロールで叩かせている。 12.ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ベートーヴェン エロイカの第一楽章のコーダでトランペットが高らかに第一主題を吹きますが、 スコアではミーソミーシミソシ(↓) シシシシ…となっております。 13.ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」 ベートーヴェン 運命の第一楽章再現部での、第2主題が現れる直前のファゴットの旋律をホルンにも吹かせている (提示部ではホルン。ベートーヴェン時代では再現部でホルンに吹かせるのは当時の楽器では調性上困難だったために ファゴットに置き換えたと言われている) 第4楽章最後のロングトーンではトロンボーンだけが四分音符一拍だけで終わっているが、 全音符で他の楽器と一緒に吹かせている。 14.チャイコフスキー 交響曲第5番 チャイコフスキー 交響曲第5番第四楽章終結部にて、トランペットが「循環主題」を吹いたその頂点、 弦楽器とおなじミーファーソーラーシーミソーという動きに変更されている。 15.シューベルト 交響曲第8番「グレート」 シューベルト交響曲第8番「グレート」第4楽章の最後のロングトーンはスコア上ではデクレッシェンド記号が付されているが、 無視されてフォルテシモのまま終結している。 (この不自然なデクレッシェンドはシューベルト自身はアクセント記号のつもりで書いたが出版社がデクレッシェンド記号と 間違えて出版してしまったとの説があり、未完成の第一楽章最後の小節も同様に考えられるが、 カラヤンは未完成ではデクレッシェンドを行っている。) 〈マハロさんから〉 1.ブルックナー交響曲第7番の第2楽章のクライマックス部分でシンバル等打楽器の付加 2.モーツァルト ティヴェルティメント第15番で第5楽章を省略 3.EMIの「フィガロの結婚」で台詞部分の全面カット 4.デッカの「こうもり」でガラパフォーマンスの付加 5.編成の違い(増加が多いのですが)でいえば、ベートーヴェンの倍管 「メタモルフォーゼン」も弦の人数を増やしているはず 6.ベートーヴェン第九の第4楽章のトルコ風の行進曲の箇所に入る前の合唱のフェルマータを異常に長く伸ばす 7.チャイコフスキー交響曲第4番の第一楽章コーダでクレッシェンドしない 8.デッカ盤「ツァラトゥストラ」の導入部コーダのオルガンが音を伸ばさない中途半端なまま演奏を終えてしまう (演奏ミスあるいは収録ミスの可能性も否定はできませんが。) 9.DG74-75年の「幻想交響曲」で第5楽章の鐘は実際に寺院で録音したものを合成した (ような話をどこかで読んだことがあります) 10.1983年テレモンディアル「アルプス交響曲」の「登り道」の12本の狩のホルンが舞台裏でなく舞台上 11.1967年映像版「カルメン」でカルメンの「ジプシーの歌」のあとにビゼーの楽曲に基づく特別なバレエ・シーンを挿入 12.アイネクライネナハトムジーク -モノラルのVPO、POの演奏は第一楽章呈示部リピート省略 (『全軌跡』から「同曲異演比較」の部分の引用) 13.ブラームス交響曲第一番 -43年ACO盤は第三楽章途中の繰り返し省略 (『全軌跡』から「同曲異演比較」の部分の引用) 14. 76,77年録音 ベートーヴェン第9、第4楽章のピッコロ ほとんど音が聴こえません 該当のDGスタジオ盤の前後のライヴを聴いてみました。 ・1976/8/29 FKM FKMCDR-147 ピッコロが聴こえます(演奏しています) ・1976/11/14 Vibrato VLL-39 ピッコロが聴こえます(演奏しています) ・1977/12/31 ユニテル映像(Euroarts) ピッコロが聴こえます(演奏しています) ・1979/10/21 SARDANA sacd-254 ピッコロが聴こえます(演奏しています) 註(Concolor@管理人) 該当箇所のピッコロについて、2007年3月24日に都志見さんからご投稿いただいた内容を 掲載します。 ーここから引用ー 該当箇所のピッコロについて、(P)1977盤が記譜どおり(おそらく)なのに対し、 (P)1963盤はオクターヴ高く吹いていることも目立っている要因でしょう。 −引用ここまでー 〈櫻井@横浜在住さんから〉 1.ヴェルディ「オテロ」(EMI) 2幕、3幕一部カット 2.モーツァルト「レクイエム」(DG 1970年代) トロンボーン1本を4本に変更 〈kikusukeさんから〉 1.1966年録音の「ボレロ」は、最後の6小節のタムタムを削除。 これはこれでトロンボーンのグリッサンドが強調されていて、非常に面白かったりするんですが 以降の録音には全てタムタムが入っています。 2.「展覧会の絵」で”バーバヤーガ”→”キエフ”はアタッカになっていますが、カラヤンはいずれもアタッカを無視し、 ゲネラル・パウゼを入れてキエフを演奏します。 ある音楽評論家がその点を指摘して「解せない」とレコード芸術に文面を載せていた記憶があります。 3「悲愴」第1楽章の第2主題の副次旋律は、速度指定が四分音符84となっていますが、 カラヤンの場合は60くらいで全て演奏されています。他の指揮者のものに比べて非常に遅く感じます。 4.チャイコフスキーの「小ロシア」では、コーダ部分の小節数を増やしていると思います。 これは楽譜を確認したわけではないのでなんとも言えませんが、他の指揮者とカラヤン盤はその部分が大きく違います。 5.チャイコフスキーの大序曲「1812年」の冒頭序奏は、丸々ドンコサック合唱団による合唱になっている (スコアではオーケストラのみで演奏され、合唱の指定はない) なお、このケースはカラヤンのほか、マゼ−ルも同様に合唱を入れています。 またマゼ−ルは「ロシア正教歌」が再現される部分にも、合唱を入れてます (カラヤンは序奏のみ)。 〈kofiさんから〉 1.ニールセンの不滅 カラヤンのものはティンパニの掛け合い以降はずっと強奏 他のCDなどでは曲の最後ちかくで音が小さくなり、最後の最後でクレッシェンドして終結 〈Kさんから〉 1.展覧会の絵「キエフの大門」フィナーレ 1987ザルツブルク音楽祭は両方鳴ってます。 1988東京文化会館は、鐘の方が主導的ですが、やはり両方鳴ってます。 1986年2月のベルリンライヴはやはり鐘は鳴ってないように聞えますが、 これは録音の関係で捉えられてないという可能性があります。 「スコア変更なしでしょう。」 註(Concolor@管理人) 楽譜では銅鑼と鐘の両方が指示されていることをkikusukeさんに教えていただきました。 65年のスタジオ録音、85年のスタジオ録音ともに銅鑼と鐘が鳴っていることも教えていただきました。 kikusukeさんのご投稿は[151] RE:展覧会の絵「キエフの大門」フィナーレです。 〈りったーさんから〉 1.マーラーの交響曲第9番第1楽章結尾(449小節)のハープですが、 スコア:ニ−イ−ニ−イ カラヤン:ニ−イ−嬰ヘ−イ 註(Concolor@管理人) この変更について、マハロさんから 1982年5月1日のフィルハーモニーにおけるライヴ(SARDANA SACD-223/4) でも「嬰へ」に音を変えています。 と教えていただきました。 註2(Concolor@管理人) 79,80年スタジオ録音(DG,POCG-3904/5) 1982年8月27日ザルツブルク音楽祭ライヴ(エア・チェック音源) を聴いて、両方とも「嬰へ」に音を変えていることを確認しました。 2.チャイコフスキーの交響曲第6番 第1楽章再現部のクライマックスのティンパニーのトレモロの扱い スコアでは、 267小節fff→270小節で>271小節ff→277小節f→となっています。 カラヤン(1971年BPO盤)は276小節でクレッシェンドさせて「決め」てくれます。 手元に音源が無くて検証できませんが、 フィルハーモニア盤ではスコア通りだった記憶があります。 〈おぐちゃんさんから〉 1.ブラームスの交響曲第1番の第4楽章の407小節目(盛り上がって金管と弦がコラールの主題を盛大に吹くところ)の全音符 1stトランペットのEの音が、 73年の映像ではAに変更(スコア改変) 63年の録音ではEのまま(スコア通り) 2.チャイコフスキーの交響曲第6番の第3楽章の練習番号Yから 71年(EMI)録音では229、239、283、293小節目において1stトランペットが主旋律を吹いています。 73年の映像ではよくわかりません 76年(DG)、84年(DG)録音では楽譜通り 3.ホルストの組曲「惑星」のベルリンフィルとの録音において 金星の最後の音の伸ばしの途中にオーボエ?のような音が一瞬なっています。 (これは初期CDからOIBPされたCDまで修正はされていないようです。) 木星の前半でトランペットがGの音をはずしているのがOIBPになって明瞭に聴き取れるようになっていますね。 4.シベリウスの交響詩「フィンランディア」のベルリンフィルとの録音(76年EMI,ART)において 64小節目の途中で一瞬トロンボーン?の音が聴こえます。 スコアにはないので恐らく誤って録音されてしまったものと思われます。 68小節目でも同じことがおきています。 この部分のティンパニですが、スコアでは66小節目の3拍目と70小節目の3拍目から入ることになっていますが、 この録音においては70小節目の3拍目ではなく、71小節目の1拍目から入っています。 64年録音ではこのようなことはありませんでした。 このティンパニはカラヤンの解釈によるものなのか、ティンパニ奏者が数え間違えたのかははっきりしません。
R.シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」作品20の46小節にシンバルを追加している演奏があります。
ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」の第1楽章にオクターヴ上げ、第1楽章展開部にティンパニの追加、第4楽章のシンバル追加がある録音があります。
交響曲第4番「ロマンティック」の第1楽章のオクターヴ上げ
交響曲第4番「ロマンティック」の第1楽章展開部にティンパニの追加
交響曲第4番「ロマンティック」の第4楽章にシンバルの追加