News Archive

2002

▲UP1月27日

リパッティとのシューマンとモーツァルト

特別更新ネタもないので、ART情報を。

Mozart/Schumann - Piano Concertos.21/:Lipatti,Karajan/Po
HMV内)

リパッティとのシューマンモーツァルトのART化です。

追記:(1月28日)
ジャケット画像予想図を作ってみました。
320*320。

まず間違いなくこんな感じでしょう(w。
オーケストラ名の配置を間違えた……

▲UP1月21日

『Herbert von Karajan 1908-1989 A Portrait』

ARTHAUSより発売された『Herbert von Karajan 1908-1989 A Portrait』を確認しました。
1999年にKarajan Centrumが中心となって作成されたドキュメンタリで、今回のDVD盤には89分収録ですが、60分版が数年前にNHKのBS-2で『永遠のマエストロ』という邦題で放送されたことがあります。
このDVD100.252のリージョン・コードは2・5ですが、再生方式がPALのため、日本の一般的な受像器では再生できません。
いまのところ何のアナウンスもありませんが、カラヤン商品の日本での売り上げは馬鹿にならないはずですので、そのうちNAXOS JAPANを通して、日本盤も発売されるのではないでしょうか。
PAL版もコンピュータに搭載されたDVDドライヴでの視聴には問題ありませんでした。
音声は英語・独語から、字幕は英語・独語・仏語から選択できます。
当然、音声・字幕とも日本語はありません。

収録されているカラヤンの映像は以下の通りです(収録順)。

  1. モーツァルト:ディヴェルティメント第17番第1楽章(87年TELEMONDIAL版)
  2. マーラー:交響曲第5番リハーサル風景(82年?/『マエストロ、マエストロ!』に収録されているのとは別の部分)
  3. インタヴィューA(88年/Karajan Centrumにあるものと同じときと思われる)
  4. インタヴィューB
  5. ロッシーニ:歌劇《ウィリアム・テル》序曲〈夜明け〉(75年UNITEL版)
  6. ワグナー:歌劇《タンホイザー》序曲(75年)
  7. ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》第3楽章(70年版)
  8. ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》第3楽章リハーサル風景
  9. 解説(クルーゾ監督とのドヴォルザーク:《新世界から》撮影時のものか?)
  10. ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》第4楽章(70年版)
  11. インタヴィューC
  12. ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との北米ツアー時の記者会見(『マエストロ、マエストロ!』に収録されているのと同じ部分)
  13. ヨハンII世&ヨゼフ・シュトラウス:ピツィカート・ポルカ(87年)
  14. プッチーニ:歌劇《ボエーム》(64年)
  15. インタヴィューD
  16. インタヴィューE
  17. R・シュトラウス:交響詩《ドン・キホーテ》(75年ロストロポーヴィチ)
  18. R・シュトラウス:楽劇《ばらの騎士》(84年)
  19. ベートーヴェン:交響曲第6番《田園》第4楽章(67年)
  20. カラヤン財団研究成果発表の記者会見
  21. モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》(87年)
  22. オックスフォード大学名誉音楽博士号授与時の入場風景(78年)
  23. R・シュトラウス:アルプス交響曲(83年)
  24. ヴェルディ:歌劇《オテロ》(73〜74年)

全て部分、長いものでせいぜい3分くらいでしょうか。
5種あるインタヴィュー映像は実際にはところどころで繰り返し挿入されていますが、重複は書きませんでした。
他に「スポーツ・カーで自宅に帰り、犬に迎えられるカラヤン」としか書きようのない映像等もいくつか収録されています。

マーラー:交響曲第5番リハーサル風景は、黒い背景に黒い服が溶け込んで、顔と腕しか見えなかったメフィストフェレスのようなカラヤンの映像が『マエストロ、マエストロ!』に収録されており、同じときのものと思われますが、こちらに収録されているのは違う部分です。
今回は椅子に座るカラヤンが『マエストロ、マエストロ!』のときより少し遠くから撮影されており、後ろから、つまり通常の観客席からの映像もあります。
カラヤンはリハーサルのとき、回転する椅子に座ってくるくる回りながら指示を出していたと聞いたことがありますが、この映像でそれが事実であることを確認できます。

便宜的にインタヴィューAとした映像は、同じときのものと考えられる『カラヤンの世界』所収「現代の奇蹟カラヤン」の著者カール・レーブルとのインタヴィューがKarajan Centrumにアップされています。

《ウィリアム・テル》序曲はVHDのみで、結局LDで発売されなかった映像です。
第1部〈夜明け〉の最終部分のティンパニが3秒ほど写っているだけです。

ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》は、ディスク化されていない70年のものです。
第3・4楽章の部分で、第4楽章のフィナーレ(850小節目あたりから以降)がほとんどまるごと収録されているのがTV版との違いです。

驚いたのは第3楽章のリハーサル風景です。
こんな映像が残されているということを初めて知りました。
オーケストラはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ですが、会場はムジークフェライン・ザールのように見えます。
ウィーンでの70年6月14日のための練習でしょうか。
1970年当時として、カラヤンの風貌は納得できますが、ちょっとボルヴィツキーが若すぎるような。
第3楽章のリハーサルのため、合唱団は写っていません。
モノクロ映像です。

「解説」をクルーゾ監督とのドヴォルザーク:《新世界から》撮影時のものかも知れないと思ったのは、これがモノクロ映像で、カラヤンの格好(ポロシャツの襟を立てている)が同じだからです。
このときの《新世界》には、カラヤンが楽曲について説明する映像が残されているはずですが、管理者はこの映像を観たことはないので、確証はありません。

《合唱》第4楽章途中に挟まれるインタヴィューはモノクロ映像で、背広を着たカラヤンがこの曲を演奏しているときについて、「全く至福のとき、しかも時間はゆっくり流れる」と語っています。

他は既出映像で、とくに解説の必要はないでしょう。
ジャケット表にまで、バルツァ、フレーニ、ムター等のクレジットがありますが、『マエストロ、マエストロ!』のようなインタヴィューはなく、既出映像からの部分でした。
ムターにいたっては、おそらくDG盤のモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番が映像のバックに流れるだけで、姿さえ見えません。
参考までに、その他の演奏者による収録映像2点を以下に記しておきます。

これによりFilmographyArchivesOthersを更新しました。

なお、今回のDVDについては、そもそもの発見とご連絡にとどまらず、すすんで人柱まで引き受けて下さったConcolorさんに感謝いたします。

▲UP1月20日

初出音源4種確認


FKMとGNPから発売された、初出音源4曲を含むCD-R盤3種を確認しました。
繰り返しになりますが、詳細を以下に挙げておきます。

以上のうち、強調してあるのが初出です。

ディヴェルティメント第17番は、以前SARDANAより発売されたことのある既出音源で、念のためSACD-294と比較しましたが、同一でした。
FKMにしては珍しく、SARDANA盤よりヒスノイズがほんの少し抑えられています。
音質良好。
SARDANA盤同様、楽章間もそのまま収録されています。

モーツァルトの交響曲第29番とベルリオーズ幻想交響曲は初出音源です。
収録はDISC-1にディヴェルティメント第17番と交響曲第29番、DISC-2に幻想交響曲です。
こちらの2曲は1日分の音源、幻想交響曲はレパートリーにも関わらず、80年代に正規録音がありませんでしたが、今回以外にも、やはり80年代に正規録音のなかった《未完成》とともに、FKM等からCD-R盤で87年8月27日分が発売されています。
幻想交響曲は同じFKMから発売されている87年8月27日の音源より、格段に優れた音質です。

上記3曲を収録したFKM-CDR-218〜9は、1枚分の厚みで2枚入るタイプのケースのため、収納場所が死活問題になっている人間としては助かりました。

《ドン・ジョヴァンニ》は、この日丸一日分としては初出ですが、おそらくこの日の音源も使われていると考えられる映像作品があります。
これはザルツブルグ音楽祭のこの年初日の上演で、カラヤンは翌年も同曲を採りあげており、88年8月6日の音源が、やはりFKMよりFKM-5007〜9としてCD-R盤で発売されています。
FKMの発売するオペラ全曲を収めた5000番台のCDは、いままで「FKM-5***」という番号でしたが、今回のこの盤は同社の交響曲や管弦楽曲を収録するその他のCD同様、「FKM-CDR-5071〜3」となっています。
珍しいことにこの音源には、序曲の前の拍手も収録されています。
私の不満は、シャンペン・アリア直後のドン・ジョヴァンニの笑い声が妙に乾いていて、元気がないことです(w。

ブラームスの交響曲は83年8月2728日の両日全曲とも、交響曲全集として以前SARDANAから発売されていたものです。
SARDANA盤より若干ヒスノイズが抑えられてはいますが、音質が抜群に向上しているというわけでもありません。

ブラームス集には初出音源として、87年2月1日のハイドンの主題による変奏曲がカップリングされています。
DISC-1に交響曲第1番、DISC-2に第2番とハイドン変奏曲、DISC-3が第3・4番です。
ハイドン変奏曲は同月にDGへスタジオ収録しており、日付は不明ながら、この日の演奏会で採りあげられている交響曲第1番の録音月が1月であることを考えると、おそらくDG盤は月をまたがっての録音で、この演奏会は録音セッション中ではないでしょうか。
音質は良好です。
私はハイドン変奏曲が大好きで、いままでライヴ音源としてはでろでろ音質のフィレンツェ盤しかないのを残念に思っていましたが、今回の音源には満足できました。

なお、当たり前ですが、今回の初出音源は全てステレオ収録です。

以上、全部をゆっくり聴く時間がいまはないため、とりあえず音質の確認及び、タイミングの取得とジャケット画像の取り込みによるLiveページの更新をおこないました。
何か気づいたことがあれば、追記します。

▲UP1月19日

OIBPのチャイコフスキー:初期交響曲集

「どうしていままで誰も入れていなかったのでしょう」とカラヤンがほとんどため息をつくようにインタヴィューでいい、レコード会社のカタログを充実させるために録音したのが見え見えだった、チャイコフスキー:《冬の日の幻想》《小ロシア》《ポーランド》の3つの初期交響曲集がOIBP化だそうです。

2002年2月輸入盤メジャー・レーベル新譜(速報版)
CDショップ・カデンツァ内)

カラヤンのチャイコフスキーとしては地味な存在に思える初期交響曲集ですが、全て唯一の録音です。
CD2枚に交響曲3つ+おまけ2曲って、ずいぶん入るものですね。
先方のページでは「OIDP」になっていますが、まさか。

同時にR・シュトラウスの管弦楽曲集が掲載されています。
値段からいって、80年代のものではなさそうですが、どうなのでしょう。
どちらにしても全曲OIBP既出です。

▲UP1月17日

「私の聴いた20世紀」

最初はレコード店で無料配布されていたため、有料になってからも知らずにそのまま持って行ってしまう人が多かったという、産経新聞『The Mostly Classic』には、『カラヤン 自伝を語る』『カラヤンの生涯』の著者フランツ・エンドラーによる「私の聴いた20世紀」という文章が連載されており、今月の内容は毎年恒例のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるニュー・イヤーズ・コンサートの歴史を振り返るというもので、もっとも記憶に残る年として、カルロス・クライバーとカラヤンのプログラムを挙げています。

ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサート - フランツ・エンドラー博士の私の聴いた20世紀
The Mostly Classic内)

本誌を見ていないため、全文かどうかはわかりませんが、上記のページで読むことが出来ます。

▲UP1月9日

『THE VIENNA PHILHARMONIC』値上げ

カラヤンの57年4月17日のブルックナー:交響曲第8番を収録した『THE VIENNA PHILHARMONIC(1957 - 1963)』を含むANDaNTEのCD6種が一斉に値上げしています。

boutiqueANDaNTE内)

$8の値上げですね。
一時的には$48で買えたのが嘘みたい。

『迷犬カラヤン』3

『迷犬カラヤン』に久々の新刊が出ていたことに全く気がつきませんでした。
第3巻です。

迷犬カラヤン 第3巻

これによりOthersを更新しました。

参考リンク

デッカの《舞踊の聖化》と《ロンドン》

ひどく散発的なデッカのレジェンド・シリーズで、ベートーヴェン:交響曲第7番ハイドン:交響曲第104番《ロンドン》がアナウンスされています。

Beethoven/Haydn - Sym.7/104:Karajan/VpoHMV内)

ドヴォルザークの8番を出して欲しいです。

▲UP1月4日

初出音源4種

最近なりを潜めていたCD-R盤による初出音源が、年明けから4曲アナウンスされています。

名演奏家貴重盤新譜2002年2月(速報版)
CDショップ・カンデツァ内)

以下に曲目を挙げておきます。
強調してあるのが初出音源です。

全てのラジオ放送が『philharmonic autocrat1』で確認出来ます。

GNPは商売汚いですねぇ。
ハイドン変奏曲のためだけに3枚組か。

《ドン・ジョヴァンニ》には、この日の音源も使われていると思われる映像作品があります。

Liveページは数日中に更新します。

追記:(1月6日)
Live及びIndexを更新しました。
いま気がつきましたが、リンク先のカデンツァさんのページは、《ドン・ジョヴァンニ》を《フィガロの結婚》としていますね。
日付が正確なら、《ドン・ジョヴァンニ》に間違いありません。

LPを聴く・3 《運命の力》序曲75年1月盤

お正月企画も今日で終わり、最後はドイツ・グラモフォン唯一の未CD化音源とされている《運命の力》序曲75年1月盤です。

《運命の力》序曲75年1月盤

《運命の力》序曲75年1月盤が収録されているのは、外国盤だと「FROM THE HEART」、日本盤だと「From Their Hearts」というタイトルのLPで、ドイツ・グラモフォンの契約演奏者たちによるオムニバスです。
ジャケットは外国盤と日本盤で多少レイアウトが違う他、よく見ると真ん中に使用されている写真の手の開き具合も若干異なっています。
また『全軌跡を追う』では外国盤2563 555として、ここに挙げてあるのとは別のジャケット写真を掲載していますが、あれはどこの国の盤なのか、管理者は1度も実物を見たことがありません。

収録曲は以下の通りです。

このアルバムが作られた経緯について、日本盤のジャケット裏に解説がありますので、以下に引用します。

 1974年のザルツブルク音楽祭の最大の呼び物のひとつは、恒例となっているカール・ベーム指揮のウィーン・フィルハーモニー他によるモーツァルトの歌劇《コシ・ファン・トゥッテ》の上演でした。このオペラの上演中の8月28日、巨匠指揮者カール・ベームは満80歳の誕生日を迎えることになり、その前日にザルツブルク市はこの偉大な芸術家のために祝賀パーティーを催しました。もう一人の巨匠ヘルベルト・フォン・カラヤンを鼓手長とするベルリン・フィルハーモニー・プラス・アンサンブルの面々が行進しながら奏する "Happy Birthday To You" によって幕を開けたこのパーティーには、他にもウィーン・フィルハーモニー、きら星のようなオペラの歌い手たちをはじめ数多くのクラシック音楽界のスターたちが集いました。またこの席には西ドイツから大統領夫妻も出席していました。

 ヴァルター・シェール西ドイツ大統領は、かねて音楽に探い関心を持っており、外務大臣時代には、自分もその一員であった、故郷デュッセルドルフの市男性合唱団をバックに民謡を唄ってシングル・レコードを録音、そのレコードの利益を福祉機関に寄付したこともあります。(このレコードは30万枚以上売れてベスト・セラーになりました!)

 Dr.ミルドレッド・シェール大統領夫人は、1973年に設立されたDeutsehe Krebshilfe E.V.(ドイツ対がん協会)の総裁をつとめており、その設立以来、今世紀人類の最大の課題のひとつであるガンの治療・研究の推進、ガンの撲滅のために忍耐強い努力を続けて来ました。そして、このパーティーの晩、カール・ベームの誕生日を祝う席の暖かい雰囲気の中で、世界中から集まった300人もの著名な音楽家たちと話しているうちに、「音楽の世界からもガンとの不断の闘いのための協力が得られないだろうか」と考え、このことを提案したのでした。

 この呼びかけに対する芸術家たちの反応は大変強く、出席していた全員がガンとの闘いへの参加を自分自身の問題として考え、協力を申し出たのです。そして音楽界の常識では考えることすらできない、この"夢の共演"のレコードはそれからまもなく現実のものとなりました。このように数多くの、現在世界中で活確している第一級の独唱者、指揮者、管弦楽団、合唱団よる演奏が1枚のレコードにカプリングされて世に出ることは、クラシック・レコード史上でも稀有のことです。しかも、まずカール・ベーム指揮のウィーン・フィルハーモニーの演奏でヘルマン・プライが歌う《コシ・ファン・トゥッテ》からのアリアが、上記ザルツブルク音楽祭の会場録音からこのレコードに収められ、更に他の8曲全部がこのレコードのためにわざわざ新しく録音されたのですから全く驚くべきことと言えるでしょう。こうしたことを可能にしたのは、一重にシェール大統領夫妻のガン撲滅運動への熱意と、これを自分自身の問題としてとらえ協力を惜しまなかった芸術家たちの誠意だったのです.

 ここに参加している芸術家たちはこのレコードの録音に全く無報酬で奉仕しました。できあがったレコードは、既に発売されている西ドイツをはじめとして世界各国で発売される予定で、その売り上げの25%がそれぞれの国でガンの治療・研究とその推進に携わっている公共の団体に寄付されることになっています。

 西ドイツの元首夫妻によって提唱されてオーストリアで生まれ、世界中の芸術家たちの協力で創られたこの1枚のレコードが、人類愛の理想と、その共通の目的とによって、日本においても広く支持されることをねがってやみません。

このLPに収められている《運命の力》序曲が何故再発売もCD化もされていないのか、よくわかりません。
チャリティー・ディスクというのは、どうも特別な契約の上に成立しているようで、たとえば現在でもときどき実現されるこの手の企画では、演奏者の所属レコード会社を無視した組み合わせが可能であり、かつ短い販売時期が終わるとそれっきりになってしまいます。
たとえば15年ほど前でしたでしょうか、"We are the World"という曲が全世界を覆うように売れたことがありましたが、この曲は現在入手出来ません。
このLPの場合、他の多くのチャリティー・ディスクと違い、演奏者は全員ドイツ・グラモフォンの契約アーティストたちですが、演奏・録音による報酬を受け取らない契約だと、再発売時に新たな契約でも必要で、それに手数がかかるからでしょうか。
それにしてもこのLPに収められているいくつかの録音はCD化されているようで、全く事情が呑み込めません。

カラヤンの《運命の力》序曲で問題になるのは、タイミングの悪いことに、この年の9・10月にヴェルディ:序曲・前奏曲集として、やはりドイツ・グラモフォンへこの曲を再録音していることです。
John Huntのディスコグラフィーでは1987年版2000年版ともに序曲集と同じ録音としており、私が知る限り別録音としているのは、『全軌跡を追う』のみです。
数年前にドイツ・グラモフォンの全ての録音履歴を載せた縦長の黄色い本が出ましたが、あちらでは確認していません。

さて、肝心の演奏の方です。
これがもう、今回の1月盤9月盤とでは、全く違いがわかりません。
カラヤンはこの曲の冒頭の金管とファゴットの咆吼を極端に引き延ばす癖がありますが、これはSP録音の頃からで、この2種でも同様です。
1月盤9月盤に較べると、冒頭の金管が微妙に速いのと、最後からふたつ目の和音と最後の和音の間がわずかに短いような気がしないでもない、といった程度でしょうか。
別録音の可能性を示唆されなければ、まず絶対に気がつきません。
その他の違いはLPやCDにしたときの多少のバランス編集の差異によるものとして片づけても問題ないほどです。

最後に、ここまで類似しているとあまり意味があるとは思えませんが、演奏内容について一応記しておきます。
入手しづらい音源についてはしばしば期待が高まり、憶測が憶測を呼んで、非常な名演と噂されることがありますが、少なくとも今回の1月盤に限っていえば、噂はあくまで噂に過ぎません(w。
演奏内容は変わらず、OIBPも出ていることですし、私ならこの2種からなら9月盤を聴きます。
カラヤンの《運命の力》では、他に見応えのあるライヴ映像もあることですし、今回の盤は余程取り憑かれている蒐集家でないと、意味があるとはいえないでしょう。

以上、3日間に渡り、カラヤンの未CD化音源について触れてみました。
これ以降も未CD化音源を入手する機会がありましたら、来年のお正月にでもご紹介したいと思います。

▲UP1月3日

LPを聴く・2 MELODIYA

昨日から始まりましたこの企画も残すところあと2回(w、今日はMELODIYA盤ライヴです。

カラヤンのMELODIYA原盤は全部で5種、このうち他レーベルからもCDで発売されているヴェルディのレクィエム《英雄の生涯》を除いた3種のLPのうち、管理者が所有しているのはブランデンブルグ協奏曲第1番と《田園》、及びオイストラフとの《トルコ風》の2組です。

《田園》とブランデンブルグ協奏曲第1番

C10 27621 004に収録されているブランデンブルグ協奏曲第1番とベートーヴェン:交響曲第6番《田園》は、ともにベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とのモスクワでのライヴ音源です。
A面にブランデンブルグと《田園》の第1楽章、B面に《田園》の第2〜5楽章ですが、実際の演奏会では《田園》が69年5月28日、ブランデンブルグは翌29日です。
会場はモスクワ音楽院大ホール。

未CD化と知るときゅうに聴きたくなってしまうのが人情で、私にとってはちょっと地味な組み合わせではあるものの、同曲の他の盤を聴くときよりも熱心だったように思います。
といっても、このLPはカラヤンのMELODIYA盤のなかでは比較的発売の新しい1988年のもので、他の盤に較べ見かける機会も多く、日本でもせいぜい2〜3千円です。
高音質で知られる旧東ドイツのレーベルを中心に扱う神田の某LP専門店なら、平気で2万円くらいつけそうですが(w。

この盤に収録されている2曲はどちらもステレオ録音、高音部に重点が置かれており、しかもA面は無理矢理詰め込んでいてカッティング・レヴェルが低いせいなのか、たてつづけに聴くとちょっと頭痛がしてきそうです。
しかし音質そのものは決して劣悪ではなく、左右の分離は悪いものの、各楽器ははっきり独立しており、ライヴ音源にありがちな「オーケストラ」という名前の単音色の笛を吹いているような、全体が溶け込んでしまっているものと較べると陸離として光っています。
両曲とも楽章間は無音ではなく、そのまま収録されています。

まず先の演奏の《田園》から。

この日のコンサート・マスターは、カラヤンが「彼以外のコンサート・マスターはいらない」とまで言ったのらしい、ミシェル・シュヴァルベです。
このときはいわゆる「オーケストラ問題」というのが起こっています。
旧ソヴィエト連邦に招かれた一行が現地に着いてみると、「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」の名前はなく、ただ「オーケストラ来る 西ベルリンより」とチラシに書いてあるだけで、シュヴァルベをはじめとした楽団員が激怒し、一時は演奏会中止にまでなりかけたものの、カラヤンの説得等により何とか気を取り直して演奏したというものです。
シュヴァルベにはこのときのことが余程印象に残っているらしく、コンサート・マスター時代の想い出を語ったインタヴィューや、フランクフルト便り(旧ベルリン便り)さんに掲載されている「ミシェル・シュヴァルベ先生・・・午後のお茶」という大変興味深い記事のなかでも言及しています。

シュヴァルベはインタヴィューのなかで、とにかく最善を尽くすと仲間内で話し合い、「心臓発作を起こさなかったことが不思議なくらい、まるで憑かれたように演奏した」と語っています。
この日は冒頭に《コリオラン》序曲、最後に《運命》を演奏していますから、「憑かれたよう」な演奏は《田園》ではなく他の曲、とくに《運命》でより実感出来そうな気がしますが、残念ながら未発売です。
全体として、直前までキャンセルを考えていたほど激昂していた人間たちの演奏とは思えない冷静・緻密な演奏で、ライヴ盤としては標準的ながら、周辺の事件をあらかじめ知った上で聴くと、ちょっと期待外れになるかも知れません。
私はカラヤンのこの曲のライヴなら1年後のウィーンでの、全く同じプログラム内での同曲を取ります。
それから、どうもこの時期癖になっていたのか、第4楽章の「雷雨」の部分、70年6月9日と全く同じ場所で、カラヤンの唸り声が聞こえます。

次にブランデンブルグ協奏曲第1番です。

モスクワ音楽院の大ホールというのは残響が乏しいのか、それとも録音の塩梅なのか、このLPの音質は先の《田園》よりこちらのブランデンブルグの方に適しているように思えます。
誰が弾いているのか、またカラヤンが線の張っていないもので格好つけて弾き振りしているのか知りませんが(w、チェンバロの音が実にちょうど良いバランスで聞こえます。
当たり前ですが、同時期のARKADIA盤NATISE(NUOVA ERA)盤等とは比較になりません。

演奏の方、これがカラヤンの同曲としても希なほど見事で、知的で冷静ながら華やかさもあり、全体としての流れが非常に滑らかで心地好いものです。
とくに第1楽章は意図的に余力を残しての演奏であり、作品を完全に掌中に収めた演奏者のみが表現しうる余裕が感じられます。
モスクワでの演奏会も2日目、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーに戻った常の技術力・表現力・集中力が解け合った、清潔で洗練された演奏です。
この盤では《田園》よりブランデンブルグがCD化されていないことの方を非常に残念に感じました。

オイストラフとの《トルコ風》

ロシア語ではステレオのことをCTEPEOと書くようで、MELODIYA盤LP番号の先頭のMやCというアルファベットは録音種別によるものだということがわかります。
オイストラフ及びヨーロッパ・コミュニティ・ユース・オーケストラとの協演であるモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番《トルコ風》のライヴが収められているLPはC10 17501-4といい、LP番号の原則からいけばステレオということになります。
このアルバムは英語では"THE WORLD'S LEADING INTERPRETERS OF MUSIC Part III. Violin, viola, cello DAVID OISTRAKH violin"というタイトルで、オイストラフ演奏の4曲のヴァイオリン曲が収録された2枚組LPです。
発売は1982年、1枚目のA面がカラヤンとの《トルコ風》、B面がロジェストウェンスキーとのショスターコヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番のライヴ、2枚目は両方スタジオ録音で、オーマンディ指揮チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲とコンヴィチュニー指揮、イゴール・オイストラフ第2ヴァイオリンのサラサーテ:スペイン舞曲集ナヴァラが収録されています。
カラヤンとの《トルコ風》は72年のベルリンでのライヴ、他に会場が思いつきませんので、おそらくフィルハーモニー・ザールでしょうが、確証はありません。

この録音、『全軌跡を追う』にはモノラルとあります。
ドイツやオーストリアでラジオ放送がステレオ化されたのは、Live音源を年代順に見ていくとはっきりわかる通り、70年から71年にかけてで、『全軌跡を追う』以外に資料がなかったものですから、疑いつつもモノラルと表記していましたが、明らかにステレオです。
まさかとは思いますが、もしこれが疑似ステレオなのであれば、これほど素晴らしい疑似ステレオは、いままで私が聴いたうち、他にはありませんでした。
音質は時代としては上々、少なくとも数年前にリリースの相次いだこの時代のCD-R盤などとは比較になりません。
ただし88年10月6日の《浄められた夜》なみに、会場に咳が多いです。
なお、『philharmonic autocrat12』や上記『全軌跡を追う』の演奏会記録等の資料は揃って日付不明としていますが、27日の演奏です。
Karajan Centrumにいたっては、この演奏の記録そのものを載せていません。

先のC10 27621 004同様、こちらも楽章間がそのまま収録されています。
演奏の方、私はオイストラフはもう少し柔らかい音色に馴染んでいましたが、鋭く若干硬めで、良く言えば切れ味が心地好く、悪く言えばわずかに耳に痛いものの、煌めく音色は相変わらずです。
学生オーケストラというのが影響しているのか、全般的に独奏者も指揮者も楽団員も丁寧に、大人しめに演奏していますが、それでもところどころずれがあるものの、全体として独奏者に楽団がよくついて行っています。

同年生まれのカラヤンとオイストラフは、互いを非常に尊敬し合っていたようで、あるインタヴィューで巨匠と呼べるような演奏家がいなくなってしまったことについてどう思うかと訊かれたカラヤンは真っ先にオイストラフの名を挙げて反論していますし、オイストラフは自分がカラヤンに勧めたというショスタコーヴィチの交響曲第10番を作曲者の前でカラヤンが聴かせたときの名演ぶりをわがことのように喜んでいます。

カラヤンとオイストラフの協演は、他に正規でベートーヴェンの三重協奏曲があるのみで、しかも曲が曲だけにオイストラフがやたらと目立っているというものでもありません。
実演で何回か協演していたものの、ライヴ音源も現在発売が確認されているのは今回のこの盤だけです。
充分「鑑賞」に堪えうる、単なる資料と呼ぶにはあまりにも惜しいこの演奏を、是非CDで再発売して欲しいところです。

以上、私が異常なほど楽しみにしているショスタコーヴィチの10番が未聴のままなのがあまりにも歯がゆいですが、MELODIYA盤について書いてみました。
最終回の明日は《運命の力》序曲75年1月盤です。

▲UP1月2日

LPを聴く・1 コロンビア・モノラル

みなさんは三が日をいかがお過ごしでしょうか。
管理者は家人の傍若無人な宣言により、家業に使っていた建物の大掃除・引越しをするなどという恐ろしい企画があったものの、さすがに他に手伝いをしてくれる人々が抵抗したため中止となり、ようやく購入したレコード・プレイヤで年末から未CD化音源を立てつづけに聴きました。
年末年始に音源その他の発売アナウンスがあるはずもなく、サイトとしては次の特記すべき更新まで間が空くものと思われ、トップのこのスペースをちょっと持て余しています。
そこで、未CD化音源について、3日間書いてみることにします。
今日はモーツァルトの《アヴェ・ヴェルム・コルプス》とモノラル盤『プロムナード・コンサート』『オペラ間奏曲集』『オペラ・バレエ曲集』です。

《アヴェ・ヴェルム・コルプス》

カラヤンの音源の再発売に関してはLP時代から熱心、というよりいささか節操に欠けるEMIが、カラヤン唯一の録音であるにも関わらず、何故かCD化していないのが、55年録音の《アヴェ・ヴェルム・コルプス》です。
初出盤はSAXで、58年から60年にかけて録音されたモーツァルト小品集とのカップリングですが、この曲のみモノラル録音です。
おそらくベートーヴェン:交響曲第9番が順調に進み、時間が余ったので録音されたのでしょう。
私が所有しているのは、甚だ残念ながら疑似ステレオの66062という盤です。

さて内容の方、モーツァルト最晩年の静かで、たった46小節しかないこの曲の雰囲気から全く外れることのない、丁寧で安定した演奏です。
ウィーン楽友協会合唱団はこの曲をそもそもレパートリーにしていたのか、ひたすら弱音で、テンポも極端にゆったりしている流れのなかを、もたつくことなく唄いあげています。
少し丁寧すぎて、臆病になっているような気配が決してないとは言えませんし、他の演奏者によるもっと素晴らしい録音もあるでしょうが、奇をてらわず、作曲者や楽曲に対する敬虔さが感じられる、カラヤンのモーツァルトのなかでも特筆に値する録音ではないでしょうか。
未CD化はあまりにも残念です。
EMIのことですから、原テープが損傷しているとか、あるいは単純にCD化するのを忘れているとかなのでしょうか(w。
また私としては時期を思いっきり外して、クリスマスに聴けなかったのも残念です。

ついでに記しておきますが、66062にカップリングされている59年録音の《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》、東芝EMIのHS-2088盤TOCE-3439より、私がこのLPから落としてCD-Rに焼いたものの方が、響きも豊かでノイズも少ないのは何故でしょうね?(w

小品集3枚


EMIの初出盤LPで、33CXで始まるものは全てモノラル音源、ステレオ音源の場合はSAXとなります。
年代としては後、つまりより新しいはずのSAXに途方もない値段がつけられ、古い33CXは比較的抵抗なく買える値段であるのは、どう考えても当時市場に出回ったSAXの数が少ないからでしょう。
ユーザ皆がそう易々とステレオ化に踏み切れたわけではない証拠です。
そう考えると、いま発売されているEMIの74年盤『ワグナー管弦楽曲集』からの一部が収められたDVD-AUDIOも、将来高値でトランスアクツィオンされるかも知れませんね(w。
33CXとSAXの両方で発売されているものがあるのは、原盤がステレオ録音で、非ステレオ・ユーザのためのモノラル発売があるためです。
Xのない33Cは10インチ盤で、多くの場合、演奏時間の短い協奏曲等がこの番号で出ています。

余談ですが、『全軌跡を追う』には、57年録音の『ワグナー管弦楽曲集』シューマン:交響曲第4番について、ステレオとの表記がありますが、これらはモノラルです。
これはLP番号一覧にSAXがないことでもわかります(同時期のブルックナー:交響曲第8番は除く)。
ただ録音年からいって、これらがモノラルなのはどうにも不自然です。
ひょとすると原盤はステレオなのに発売されておらず、『全軌跡を追う』の編者は、何かの資料でそれについて掴んでいるのかも知れません。

ここに書く3枚は全て、原テープから純粋なモノラルである小品集です。
初出でこの3枚に収録された録音が全て未CD化というわけではありません。
以下に未CD化音源を挙げておきます。

『全軌跡を追う』では『プロムナード・コンサート』の曲順が滅茶苦茶になっています。
モノラル盤の初出の曲順は『全軌跡を追う』でいうと、60年のステレオ盤と同じ、つまり上記順で最後の9曲目に《天国と地獄》が入っています。
あるいはモノラル盤ステレオ盤で内容が入れ替わってしまっているのかも知れませんが、管理者がステレオ盤の初出LPを未入手のため、確認できません。
そのため録音年月日やオムニバスものの収録曲が正確なのかどうかわかりませんが、これはそのうちレッグのディスコグラフィーや『philharmonic autocrat1』を参考に確認したいと思います。
またEMIからは未CD化であっても、ライセンス提供を受けている別レーベルがCD化しているものはあるかも知れません。

さて、未CD化曲についてです。
盤は全て初出の33CX。

まず、『プロムナード・コンサート』
全く同じ選曲のステレオ盤がありますし、曲が曲だけにモノラルではつまらないかと思っていましたが、そうでもありません。
私が気に入ったのはシャブリエの楽しい行進曲、これが本当に楽しい。
B面1曲目の《雷鳴と電光》は、録音があまり良いとはいえないものの、楽しさ・活発さは楽しい行進曲同様で、「この2曲は一発録りです」と言われれば即座に信じます。
曲のそのものの好みでいえば、私がこのなかでもっとも好きな《軽騎兵》序曲は、さすがに金管のトゥッティでは録音レヴェルの限界が感じられますが、冒頭のトランペットの響きは器楽的でとても澄んだ美しいものです。
私はカラヤンのこの曲の演奏では78年のジルヴェスターの、喜歌劇の序曲というより一遍の交響詩のような演奏が大好きですが、《軽騎兵》らしさ、心地好い軽やかさという点ではこちらの方が上でしょう。

次は『オペラ間奏曲集』
カラヤンはこの手のアルバムを4回作っていますが、それぞれ少しずつ選曲が違います。
他を圧倒して余りあるDG盤1枚だけで良いくらいですが、良かろうが悪かろうがとにかく手に入れるというのが蒐集の王道(w。
このアルバムでは全11曲中、8曲がCD化されていますが、ぶつぶつ切りで、2枚のCDを手に入れないといけません。
未CD化曲は、むしろ先の『プロムナード・コンサート』に入れた方が良かったのではないかと思える《カルメン》第4幕前奏曲、レッグのストレート・フラッシュの1人、パリキアンの独奏による《タイス》の瞑想曲、そして《ゴイェスカス》間奏曲です。
こちらは全体的に先の『プロムナード・コンサート』より若干音質が劣っているように思えます。
低音が無闇に響き、とくに《カヴァレリア・ルスティカーナ》のオルガンは、スピーカの前にいるだけで肩のこりがほぐれるほどの振動で、この点はARTリマスターリングされたCDでも同じです。
《カルメン》はこのとき第2・3幕前奏曲も録音されていますが、未発売です。
第4幕前奏曲は59年のステレオ盤からは抜けているものの、58年録音のビゼーの組曲集でステレオ録音されていますし、《ゴイェスカス》間奏曲は同じ趣旨のステレオ盤に収録されているので、二重の意味でCD化されていない曲は《タイス》の瞑想曲だけです。
しばしば響きが冷たいといわれるフィルハーモニア管弦楽団の弦ですが、この《タイス》を聴くとそういう感想は浮かびません。
曲が曲としても、それほど興に乗っている演奏ではありませんが、パリキアンを信頼して、オーケストラがよく支え、また独奏者自身がオーケストラの一員であるということがプラスとして働いているのでしょう、独奏と伴奏がよく解け合って違和感がありません。

最後は『オペラ・バレエ曲集』です。
これは不思議な盤で、録音日が5・6・8日と隣接しているにも関わらず、〈時の踊り〉と〈ヴェーヌスベルグの音楽〉を収録しているA面のマトリックスがXAX861、《アイーダ》のバレエ音楽、〈ペルシャの奴隷の踊り〉、〈だったん人とだったんの娘たちの踊り〉を収録しているB面がXAX739と、かなりかけ離れています。
レッグのディスコグラフィーによると、空いている7日にはレッグ自身何の録音もしていないようで、このマトリックス番号の欠落は一体何なのでしょう。

このアルバムにも曲順は違うものの、全く同じ選曲のステレオ盤があります。
初出の組み合わせからCD化されていないのは上記2曲、残りの3曲はCDM5 666032-8に収録されています。
〈ヴェーヌスベルグの音楽〉はやはり序曲とともにつながって演奏されるべきで、この部分だけ抜き出すというのは、どうも私には納得いきません。
しかも私が狂うほど愛しているカスタネットが、この録音ではあまりに遠すぎて、よく聴きとれるとは言い難いものがあります。
これはいずれはARTリマスターリングされたCDが出れば改善されるでしょうか。
〈だったん人の娘たちの踊り〉〈だったん人の踊り〉も、他に優秀な録音があることですし、何もこの盤で聴くこともないでしょう。

総じてこれらの小品集3枚は、ステレオ録音もあることですし、何が何でも聴いてみるべきというものでもありません。
どうしてもこのなかから1枚と言われれば、未CD化音源の数ということを考慮に入れずとも、全体として出来の良い『プロムナード・コンサート』をお勧めします。

ただ、これらの小品集はレッグやカラヤンが相当考慮して曲順を考えているはずであり、たとえばDGへの67年録音のオペラ間奏曲集等にもいえることですが、初出の曲順で聴いて、初めてアルバム1枚を聴く喜びがあります。
レコード1枚が高価だった時代、これらの盤を何かの折りにプレゼントにでももらえることがあったのなら、選曲でも演奏でも録音でも、そして曲順でも、忘れられない1枚になったことは間違いありません。
EMIはせっかくARTリマスターリングしているにも関わらず、上記3枚をぶつぶつに切り刻んでCD化しています。
余白におまけとして小品を入れるのは決して悪いことではなく、むしろ楽しいものですが、しかし初出の収録曲を初出の曲順通りに収録したアルバムも同時にCD化して欲しいものです。
それがたとえCD1枚に45分くらいしか収録されないとしても、私ならそれで満足です。

なお、『全軌跡を追う』では『シャンペン・コンサート』について、《ジプシー男爵》序曲が未CD化となっていますが、オムニバスで皇帝円舞曲と《美しく青きドナウ》を収録しているとあるCMS7 63456-2には、このアルバムの全曲が、初出順に収録されています。

以上、今日はコロンビアのモノラル盤についてでした。
2回目の明日はMELODIYA盤ライヴです。

オンライン版『迷犬カラヤン』

『迷犬カラヤン』のオンライン版が更新されています。

第12回「明けましておめでとう ワン」の巻 - 迷犬カラヤン クリック漫画
Pet Japan内)

▲UP1月1日

謹賀新年

あけましておめでとうございます。
新年といえば、この曲でしょう。

例によってYAMAHAMIDPLUGを使用しています。
MIDIファイルはP.Cvikl氏の打ち込みによるものです。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。


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